Windowsでは、アンインストール済みのアプリやポータブル版のアプリが、ファイルの関連付け情報だけをレジストリに残してしまうことがあります。
たとえば .epub や .pdf などのファイルで「プログラムから開く」を表示したとき、すでに使っていないアプリが候補として残るケースです。
ここでは、HKEY_CLASSES_ROOT に登録されているファイル関連付けを調べ、指定した実行ファイルに紐付いているレジストリキーを削除するPythonツールの使い方を説明します。
このツールがすること
このツールは HKEY_CLASSES_ROOT、略して HKCR の直下にあるキーを調べます。
各キーについて、
HKEY_CLASSES_ROOT\<キー名>\shell\open\command
を確認し、既定値に設定されているコマンドの実行ファイル名を取得します。
たとえば次のような登録があったとします。
"C:\Program Files\Calibre2\ebook-viewer.exe" "%1"
指定した実行ファイル名が ebook-viewer.exe なら、この関連付けを対象として検出します。
通常実行すると対象のレジストリキーを削除し、--dry-run を付けると削除せず対象だけを表示します。
動作環境
このスクリプトはWindows専用です。
Pythonの標準ライブラリである、
argparsectypesoswinreg
だけを使用しているため、追加パッケージのインストールは必要ありません。
Python 3をインストールしたWindows環境で使用できます。
まずはスクリプトを保存する
コードを、たとえば次の名前で保存します。
remove_association.py
コマンドプロンプトまたはPowerShellを開き、ファイルを保存したディレクトリへ移動してください。
例:
cd C:\Tools
最初は必ず --dry-run で確認する
レジストリキーを削除するツールなので、最初から削除を実行するのではなく、まず --dry-run を使って対象を確認するのが安全です。
書式は次のとおりです。
python remove_association.py <実行ファイル名> --dry-run
たとえば calibre.exe に関連付けられた項目を調べる場合は、
python remove_association.py calibre.exe --dry-run
と実行します。
対象が見つかると、次のような形式で表示されます。
Found 2 association(s).
HKEY_CLASSES_ROOT\Calibre...
command = "C:\Program Files\Calibre2\calibre.exe" "%1"
HKEY_CLASSES_ROOT\...
command = "C:\Program Files\Calibre2\calibre.exe" "%1"
dry-run: No keys were deleted.
最後に
dry-run: No keys were deleted.
と表示されている場合、レジストリは変更されていません。
実際に削除する
--dry-run の結果を確認し、本当に不要な関連付けだけが検出されていることを確認したら、--dry-run を外して実行します。
python remove_association.py calibre.exe
削除に成功すると、
DELETED: HKEY_CLASSES_ROOT\...
と表示されます。
複数の関連付けが見つかった場合は、検出されたキーが順番に削除されます。
実行ファイル名だけを指定する
引数に指定するのは、基本的には実行ファイルのフルパスではなくファイル名です。
たとえば、
C:\Program Files\Calibre2\calibre.exe
ではなく、
calibre.exe
を指定します。
このツールはレジストリに登録されたコマンドをWindowsのルールに従って分解し、その先頭にある実行ファイルのファイル名だけを取り出して比較しています。
比較では大文字・小文字を区別しません。そのため、
CALIBRE.EXE
と
calibre.exe
は同じものとして扱われます。
なぜ単純な文字列検索をしていないのか
関連付けのコマンドは、単純に実行ファイルのパスだけが保存されているとは限りません。
たとえば、
"C:\Program Files\Example\viewer.exe" "%1"
や、
"C:\Program Files\Example\viewer.exe" --open "%1"
のような形式があります。
さらにWindowsのコマンドラインでは、引用符や空白の扱いに独自の規則があります。
そこでこのツールでは、
CommandLineToArgvW
というWindows APIを使ってコマンド文字列を解析しています。
解析後の最初の引数から、
os.path.basename(parts[0])
で実行ファイル名を取り出しています。
そのため、単純に
if "calibre.exe" in command:
のような部分一致で判定するより、誤検出が起こりにくい構造になっています。
REG_EXPAND_SZ にも対応
レジストリのコマンドが通常の文字列 REG_SZ だけでなく、環境変数を含む REG_EXPAND_SZ だった場合にも対応しています。
たとえば、
"%ProgramFiles%\Example\viewer.exe" "%1"
のような値です。
この場合は、
os.path.expandvars(value)
によって環境変数を展開してから解析します。
関連付けの検索方法
検索の中心となっているのが find_associations() です。
def find_associations(target_exe: str):
ここでは HKEY_CLASSES_ROOT の直下を winreg.EnumKey() で順番に走査しています。
それぞれについて、
<キー>\shell\open\command
を読み取り、実行ファイル名が指定された名前と一致すると、
yield key_name, command
で削除候補として返します。
つまり、このツールの検索対象は HKCR直下の各キーに存在する shell\open\command です。
Windowsに存在するあらゆる種類の関連付け情報を網羅的に検索するツールではない点には注意してください。
削除はサブキーも含めて行われる
レジストリキーは、その下にサブキーが存在すると単純には削除できません。
そのため delete_registry_tree() では、子キーを再帰的に削除してから親キーを削除しています。
概念的には、
対象キー
├─ DefaultIcon
├─ shell
│ └─ open
│ └─ command
└─ その他
という構造があった場合、下の階層から順番に削除し、最後に「対象キー」そのものを削除します。
したがって、このツールで検出されたキーを削除すると、shell\open\command だけではなく その関連付けキー全体が削除されます。
これは重要なポイントです。
権限エラーが出た場合
削除時に、
ACCESS DENIED: HKEY_CLASSES_ROOT\...
と表示されることがあります。
これは、そのレジストリキーを書き換えるための権限が現在のユーザーにない場合などに発生します。
必要であれば「管理者として実行」したPowerShellやコマンドプロンプトから実行します。
ただし、権限エラーが出たからといって、無条件に管理者権限で削除すべきとは限りません。
まず --dry-run の出力を見て、そのキーが本当に不要なものか確認してください。
対象が見つからない場合
一致する関連付けが存在しない場合は、
No associations matching 'calibre.exe' were found.
のように表示されます。
この場合、何も削除されません。
ただし、目的の関連付けがWindows上に表示されているにもかかわらず検出されないこともあります。
Windowsのファイル関連付けは複数の場所に保存されており、このツールが調べているのは、
HKEY_CLASSES_ROOT\<key>\shell\open\command
という形式の登録だけだからです。
使用例
foo.exe に紐付く関連付けを確認するだけなら、
python remove_association.py foo.exe --dry-run
確認後、削除するなら、
python remove_association.py foo.exe
です。
たとえば検出結果が、
Found 1 association(s).
HKEY_CLASSES_ROOT\Foo.Document
command = "C:\OldApps\Foo\foo.exe" "%1"
だったとします。
この状態で通常実行すると、削除対象は単に、
HKEY_CLASSES_ROOT\Foo.Document\shell\open\command
だけではありません。
HKEY_CLASSES_ROOT\Foo.Document
以下のツリー全体です。
そのため、Foo.Document に別の情報も登録されている場合、それらも失われます。
使用上の注意
このツールはレジストリを直接削除します。削除したキーを元に戻す機能はありません。
特に注意すべきなのは、指定したEXE名に一致した shell\open\command を見つけると、その command キーだけでなく HKCR直下の関連付けキーそのものを再帰的に削除する ことです。
そのため、基本的には次の順序で使うことを推奨します。
- 対象となるEXE名を確認する
--dry-runで検索する- 表示されたすべてのレジストリキーを確認する
- 必要ならレジストリエディターで対象キーをエクスポートしてバックアップする
- 問題がないことを確認してから通常実行する
特にWindows標準アプリや現在使用中のアプリを対象にするのは避けたほうがよいでしょう。
まとめ
このツールは、Windowsの HKEY_CLASSES_ROOT を調べて、
<キー>\shell\open\command
に指定した実行ファイルが登録されている関連付けを探し、そのキーを削除するためのものです。
基本的な使い方はシンプルです。
確認だけなら、
python remove_association.py calibre.exe --dry-run
実際に削除するなら、
python remove_association.py calibre.exe
です。
レジストリを直接操作するため、最初に --dry-run で対象を確認することが最も重要です。
アンインストール後も残っている古いファイル関連付けや、不要になったアプリの関連付けを整理するときに使えるツールですが、削除対象は関連付けキー全体なので、内容を確認したうえで慎重に使用してください。
import argparse
import ctypes
import os
import winreg
from ctypes import wintypes
shell32 = ctypes.WinDLL("shell32", use_last_error=True)
kernel32 = ctypes.WinDLL("kernel32", use_last_error=True)
shell32.CommandLineToArgvW.argtypes = [
wintypes.LPCWSTR,
ctypes.POINTER(ctypes.c_int),
]
shell32.CommandLineToArgvW.restype = ctypes.POINTER(wintypes.LPWSTR)
kernel32.LocalFree.argtypes = [wintypes.HLOCAL]
kernel32.LocalFree.restype = wintypes.HLOCAL
def split_windows_command(command: str) -> list[str]:
argc = ctypes.c_int()
argv = shell32.CommandLineToArgvW(command, ctypes.byref(argc))
if not argv:
raise ctypes.WinError(ctypes.get_last_error())
parts = [argv[i] for i in range(argc.value)]
kernel32.LocalFree(argv)
return parts
def get_open_command(root, key_name: str) -> str | None:
subkey = rf"{key_name}\shell\open\command"
try:
with winreg.OpenKey(root, subkey, 0, winreg.KEY_READ) as key:
value, value_type = winreg.QueryValueEx(key, "")
if value_type in (winreg.REG_SZ, winreg.REG_EXPAND_SZ):
if value_type == winreg.REG_EXPAND_SZ:
value = os.path.expandvars(value)
return value
except (FileNotFoundError, PermissionError, OSError):
pass
return None
def executable_name_from_command(command: str) -> str | None:
try:
parts = split_windows_command(command)
except (ValueError, OSError):
return None
if not parts:
return None
return os.path.basename(parts[0])
def find_associations(target_exe: str):
target_exe = target_exe.casefold()
root = winreg.HKEY_CLASSES_ROOT
index = 0
while True:
try:
key_name = winreg.EnumKey(root, index)
except OSError:
break
index += 1
command = get_open_command(root, key_name)
if command is None:
continue
executable_name = executable_name_from_command(command)
if executable_name is None:
continue
if executable_name.casefold() == target_exe:
yield key_name, command
def delete_registry_tree(root, subkey: str):
try:
with winreg.OpenKey(
root,
subkey,
0,
winreg.KEY_READ | winreg.KEY_WRITE,
) as key:
while True:
try:
child = winreg.EnumKey(key, 0)
except OSError:
break
delete_registry_tree(root, rf"{subkey}\{child}")
winreg.DeleteKey(root, subkey)
except FileNotFoundError:
pass
def main():
parser = argparse.ArgumentParser(
description=(
r"Checks the executable name in HKCR\<key>\shell\open\command and "
"deletes keys associated with the specified exe."
)
)
parser.add_argument(
"exe",
help="Executable filename to search for. Example: calibre.exe",
)
parser.add_argument(
"--dry-run",
action="store_true",
help="List only the target keys without deleting them",
)
args = parser.parse_args()
matches = list(find_associations(args.exe))
if not matches:
print(f"No associations matching {args.exe!r} were found.")
return
print(f"Found {len(matches)} association(s).")
print()
for key_name, command in matches:
print(fr"HKEY_CLASSES_ROOT\{key_name}")
print(f" command = {command}")
if args.dry_run:
print()
print("dry-run: No keys were deleted.")
return
print()
print("Deleting.")
for key_name, command in matches:
full_name = fr"HKEY_CLASSES_ROOT\{key_name}"
try:
delete_registry_tree(winreg.HKEY_CLASSES_ROOT, key_name)
print(f"DELETED: {full_name}")
except PermissionError:
print(f"ACCESS DENIED: {full_name}")
except OSError as e:
print(f"ERROR: {full_name}: {e}")
if __name__ == "__main__":
main()